オーナーズエンジニアリングとは?担当者の役割や求められる能力を解説

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プラント・設備を建設するエンジニアリングのやり方の一つに、
「オーナーズエンジニアリング」というものがあります。

本記事ではオーナーズエンジニアリングの目的や、
担当者の役割・求められる能力について解説します。

オーナーズエンジニアリングとは

言葉の意味

エンジニアリングのやり方のひとつです。

自社設備を使って石油・化学・素材・自動車といった
製品を製造している企業(設備のオーナー企業)側で、
エンジニアリングの専門家を雇うやり方を「オーナーズエンジニアリング」と言います。

エンジニアリングの定義と仕事の流れについては、
別の記事で詳しく解説しています。

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オーナーズエンジニアリングの目的

エンジニアリングを行う上では、
機械・電気・計装・土建といった工学系の知識や、
予算見積・調達・工程管理といったエンジニアリング特有の知識が必要になります。

これらはオーナー企業が扱う製品の製造プロセスとは、専門分野が別になりますので、
オーナー企業が製造設備を新設・改造したくなった際は、
エンジニアリングの専門家に頼る事になります。

エンジニアリングの専門家を外注する手もありますが、
外注業者では製造現場に入り込めず最適な設備仕様を検討する事が困難でな上、
製造プロセスや特殊な設備仕様などの秘匿情報が外部に漏洩するリスクもあります。

こうした理由から、オーナー企業側でエンジニアリングの専門家を雇っておく
オーナーズエンジニアリングというやり方が採用されます。

ちなみに、オーナー企業側のエンジニアリング担当者の事を、
そのまま「オーナーズエンジニア」と呼びます。

担当者の役割

オーナー企業がエンジニアリングの専門家を雇う目的から考えると、
オーナーズエンジニアの役割は以下であると言えます。

  • 製造現場の要望と、エンジニアリングの現実性の間で、最適な設備仕様を決定する事
  • オーナー目線で設備の維持管理のし易さを追求すること
  • 製造プロセスや特殊な設備仕様などの秘匿情報をオーナー企業側で保持しておく事

設備メーカーやエンジニアリング会社といった外注業者との違いは、
仕様を決める側か、決められた仕様通りに作る側か、です。

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オーナーズエンジニアの具体的な仕事内容

企画・仕様決定

オーナー側(=発注側)として、要求する設備の仕様を明確化し、
外注業者に発注するための仕様書を作成します。

仕様を決定する上では、設備が納入された後は全て自社で維持管理していく、
という事を念頭に入れて、広い目線・長期目線で考える事が重要です。

具体例としては、

  • 操業・メンテナンスの容易さを考慮する
  • 将来的な改造スペースを見込んだ構造する
  • ライフサイクルコストを最小化する

などが挙げられます。

3つ目のライフサイクルコストとは、
設備が導入されてから寿命を迎えるまでの期間において、
維持管理にトータルで掛かるコストの事を言います。

1億円で導入できるが維持費に毎年1千万円掛かる設備より、
維持費の掛からない設備を2億円で導入した方が、
10年目以降の長期目線で考えると安い、とう考え方です。

実際に仕様書を書く際の注意点などは、
別の記事で説明しています。

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外注業者の選定

数あるメーカー・エンジニアリング会社の中から、
技術力・費用・納期などを総合的に考慮して最適な業者を選定します。

発注方法についても、
エンジニアリング会社に設計、機器購入、製作、工事まで全て任せるのか、
設備メーカーに製作まで任せて工事だけ別業者に頼むのか、
機器購入の一部だけ自社で行い設備メーカーに支給するのか、
組み合わせは無限にあります。

案件一つ一つに対して、
要求仕様を満足しつつ、最安価・最短納期で納入できる
最適な組み合わせは何か?を考えて発注していきます。

製造現場、外注業者との折衝

製造現場の要望ばかり聞いていると外注業者に無理難題を
突き付ける事に繋がり、エンジニアリングが進みません。

一方で外注業者も、製造現場が抱える課題や日々の苦労が分からないので、
エンジニアリングのし易さを優先しがちになります。

両者の立場を良く理解し、折衝役として落としどころを探っていくのも
大切な仕事の一つです。

案件の進捗管理

オーナーズエンジニアはオーナー企業側の代表として、
プロジェクトリーダーの役割を担う事が多いです。

案件の進捗を日々管理し、工程が遅れた箇所があれば
後ろの工程の中から調整できる箇所を探して挽回方法を考えます。

進捗管理の他にも、予算が不足する事無く運用されているか、
設計が仕様から外れていないか、案件全体の管理を担います。

案件が無事に完了するまでは、
製造現場や外注業者から日々様々な相談、確認依頼が
プロジェクトリーダーに飛んできます。

これらを全て適切に対処して、
案件が軌道から逸れる事が無いよう調整・管理していきます。

オーナーズエンジニアに求められる知識・能力

オーナーズエンジニアの役割と仕事内容を踏まえて、
求められる知識・能力について触れます。

現場の設備に関する深い理解

現場で稼動している設備の仕様、操業方法、メンテナンス方法
に関する深い理解が無ければ良い設備は作れません。

過去に起きたトラブルの情報、得られた教訓も知っておく必要があります。
同じトラブルを再発させないよう、設備を新設・改造する際は
対策をあらかじめ仕様書に織り込む事が重要です。

コミュニケーション能力

製造現場や外注業者と折衝が多い仕事ですので、
円滑にエンジニアリングを進めるために
多くの関係者と上手くコミュニケーションを取る必要があります。

コミュニケーション能力といっても
単に明るく話せば良いのではありません(もちろんその方が有利ですが)。
相手の立場を理解しながら納得のいく説明を準備して、
社内・社外の関係者を動かす能力が求められます。

上手くコミュニケーションを取って人に仕事を頼む方法については、
別の記事で紹介しています。

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決断力

関係者とコミュニケーションを取りながら仕様を決めていく事が基本ですが、
誰に聞いても明確な答えが出ない時もありますし、
何から何まで関係者に確認していては仕事が進みません。

技術者として自分で調べて考えて、決断を下す力も必要です。

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まとめ

オーナーズエンジニアリングの目的や、
担当者の役割・求められる能力について解説しました。

  • オーナーズエンジニアの役割は、製造現場とエンジニアリング会社の間に入って最適な設備仕様を決定すること
  • プロジェクトリーダーとして案件の進捗管理や関係者との折衝を行う
  • 製造現場に関する深い理解、コミュニケーション能力、決断力が求められる

プラントエンジニアの皆様の参考になれば幸いです。

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