プラント設備などでは流体のON-OFFや流れ方向を切替えるために「電磁弁」が多用されます。
電磁弁は駆動方式などにより様々な種類が存在するため、回路図の記号ではそれぞれ書き分けられます。
本記事では電磁弁の記号の意味と、回路図での見分け方を詳しく解説します。
電磁弁とは
電磁弁とは「電磁石」と「弁」を組み合わせた物で、電磁石(ソレノイド)への電流をON-OFFする事で流体の流れを止める、流す、方向を変える、といった操作を遠隔で行えるようにする装置です。
単純に流体の流れをON-OFFする使い方が基本ですが、接続口数によっては流れ方向を切替える使い方もする事から「電磁切替弁」「方向制御弁」と呼ばれる事もあります。
電磁弁の仕組みと構造については、以下の記事で詳しく解説しています。
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電磁弁の記号(例)
上図は、回路図で見る電磁弁の記号の例です。
電磁弁には多くの種類が存在し、持っている機能も様々です。こうした機能の違いを記号で表現しており、上図の記号には以下のような機能が表現されています。
各記号の意味を以下で詳しく解説します。
電磁弁の記号(解説)
ポート
電磁弁に出入りする流体の接続口をポートと呼びます。
ポートにはPポート、Rポート・・・のように名前が付けられており、それぞれ以下のような役割があります。(※メーカーによっては呼び方が異なるのでカタログ等で調べるとよいでしょう)
ポート記号 | 用途 |
---|---|
Pポート | 流体を電磁弁へ供給するポート。 |
Rポート | 流体を電磁弁から排出するポート。 |
Aポート | アクチュエータへの供給・戻りを切替えて使用するポート。 通電時に供給する側をAポートと呼ぶ事が多い。 |
Bポート | アクチュエータへの供給・戻りを切替えて使用するポート。 通電時に戻る側をBポートと呼ぶ事が多い。 |
位置数(ポジション数)
電磁弁のスプールが持てるポジションの数を表します。四角い部屋の数がポジションの数になります。
つまり四角い部屋が2つ書かれている場合は2ポジション、3つ書かれている場合は3ポジションの電磁弁となります。なお四角い部屋の中には、各ポジションにおける流体の流れの向きを矢印で示してあります。
また上図において、左側が通電時のポジション、右側が非通電時のポジションとなっています。
四角い部屋の左右には、後述するソレノイドやバネが書かれていますが、ソレノイドに近い側が通電時のポジション、バネに近い側が非通電時のポジションとなります。ソレノイドで押されて切替わる部屋が通電時、バネで押されて切替わる部屋が非通電時、と考えると覚えやすいです。
ソレノイド
長方形に斜線を引いた記号でソレノイドを表します。斜線の向きは右下がりでも、左下がりでも、どちらでも構いません。
シングルソレノイドの場合は片側のみ、ダブルソレノイドの場合は左右両側にソレノイド記号を書きます。
バネ
ギザギザの線はバネを表します。バネが内蔵された電磁弁は、ソレノイド非通電の際に、スプールを通電時とは逆側に固定する機能を持ちます。
記号で書く際、ソレノイド側に書かれた箱が通電状態の流れ方向、バネ側に書かれた箱が非通電状態(ノルマル状態)の流れ方向となります。
2方向の電磁弁には常時閉(ノルマルクローズ)か常時開(ノルマルオープン)の2種類存在しますが、上記の考え方で「どちらがバネに近い側か?」を見ると、下図のように左が常時閉、右が常時開の電磁弁と判別することができます。
パイロット弁
四角の中に三角が書かれた記号でパイロット弁を表します。パイロット弁とは、ソレノイドの力だけではスプールの開閉力が足りない場合に、流体の圧力を利用してスプールを開閉させるための弁です。三角が白抜きの場合はエアーパイロット、塗りつぶしの場合は油圧パイロットを表します。
パイロット系統の取り方は2種類あり、電磁弁で操作したい流体から直接取る場合を「内部パイロット式」、外部の別系統から取る場合を「外部パイロット式」と呼びます。
下図のように、パイロット系統を表す「点線」が伸びているか否かによって、これらを見分ける事が出来ます。
手動操作
T字の記号は手動操作可能な電磁弁である事を表しています。側面に押しボタンが付いているイメージで考えると覚えやすいです。
電磁弁は通常、ソレノイドのON-OFFで切替えますが、設備の試運転や故障点検の際には手動操作の機能があると便利です。
手動操作の方法としては、押しボタン、つまみをひねる、などのタイプがあります。
サイレンサー
上で赤く示した記号でサイレンサー(消音器)を表します。厳密には電磁弁の記号ではありませんが、エアー操作用の電磁弁では、電磁弁記号にセットで使われるので紹介します。
排気側にサイレンサーを設置することで、排気時の音を小さくする事ができます。
まとめ
電磁弁の記号の意味と、機能の見分け方を解説しました。代表的な機能を下図に示します。電磁弁には非常に多くの種類があり、機能の違いを記号で表現しています。
皆様の参考になれば幸いです。