【もう迷わない!】電磁弁の種類・特徴を徹底解説

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プラント設備では流体のON-OFFや流路方向を制御するために「電磁弁」が多用されます。

電磁弁はその弁体構造や駆動方式などにより様々な種類が存在するため、選定の際に迷う場合も多いと思います。

本記事では、電磁弁を選定するための基礎知識として、電磁弁の種類・特徴を詳しく解説します。

電磁弁とは

(電磁弁の例 引用元:CKD japan

電磁弁とは「電磁石」と「弁」を組み合わせた物で、電磁石(ソレノイド)への電流をON-OFFする事で流体の流れを止める、流す、方向を変える、といった操作を遠隔で行えるようにする装置です。

単純に流体の流れをON-OFFする使い方が基本ですが、接続口数によっては流れ方向を切替える使い方もする事から「電磁切替弁」「方向制御弁」と呼ばれる事もあります。

  

(電磁切替弁の例 引用元:制御機器FAオンライン

電磁弁の仕組みと構造については、別記事で詳しく解説しています。

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電磁弁の種類・特徴(一覧表)

「電磁弁」と一言でいっても、その弁体構造・駆動方式・接続口数などにより実に多くの種類が存在し、各々で使い方や役割が異なります。

電磁弁を選定するにはこれらの種類と特徴を理解する事が不可欠です。以下に電磁弁の選定項目・種類・特徴を簡単に表でまとめます。各選定項目の詳細について次項で解説します。

電磁弁の種類と特徴まとめ

なお、電磁弁の記号の意味・見分け方については下の記事で詳しく解説しています。回路図を読む・書く際の参考にしてください。

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電磁弁の種類・特徴(解説)

弁体構造

弁体の形状や動き方によって、以下の3種類に分けられます。

ポペット式

ポペットバルブの仕組み

弁体が弁座から垂直方向に移動し、弁の開閉を切替える構造をしています。

ストロークが短く構造が単純で、弁体に摺動部が無いので長寿命というメリットがあります。一方で、弁体が開閉する際に流体圧力に逆らうため、流体圧力が大きい場合は大きな駆動力が必要というデメリットがあります。

スプール式

電磁弁のスプールの仕組み

串形状の弁体(スプール)を円筒形の筒の中で軸方向に駆動させ、流路の開閉や方向切替を行います。多ポートの弁によく見られる構造です。

軸方向に圧力が平衡するため、ポペット式と比較して駆動力が小さく済むとうメリットがあります。一方で、スプールの摺動部が磨耗し易いというデメリットがあります。

スライド式

スライド式電磁弁の仕組み

平面でスライドする板状の弁体と、溝や穴が彫られた弁座との位置関係の変化により流路方向を切替えます。多ポートの弁に見られる構造です。

ソレノイド数

電磁弁に取り付けられたソレノイドの数によって、以下の2種類に分けられます。

シングルソレノイド

シングルソレノイド電磁弁の仕組み

ソレノイドが片側1つにしか無い電磁弁です。非通電時はバネの力を使って、スプールが元の位置に戻ります(通電時とは逆の位置)。

通電の時間が比較的短い場合や、停電などの非常時に流体が流れっ放しだと困る場合に、常時閉にしておく目的で採用される事が多いです。

ダブルソレノイド

ダブルソレノイド電磁弁の仕組み

ソレノイドが両側2つにある電磁弁です。「バネ無し」「バネあり」で動きが異なります。

「バネ無し」タイプの場合、シングルソレノイドのようにバネの力でスプールが元の位置に戻る事はなく、通電時に流路が切替わった後は、逆側に通電しない限りは位置が保持されます。シリンダーの動作方向を切替える際、非通電であっても押すor引くのどちらかには常に力を掛けておきたい場合などに使用します。

「バネあり」タイプの場合、ソレノイド2つのどちらにも非通電の場合は両側のバネの力でスプールが中立位置に保持されます。従ってダブルソレノイドのバネありタイプは3位置(3ポジション)を作れることになります。中立位置での流れ方はクローズドセンタ・エキゾーストセンタ・プレッシャーセンタの3種類が使い分けられます。詳しくは後述します。

操作電源

ソレノイドには、DC(直流)電源で駆動するDCソレノイドと、AC(交流)電源で駆動するACソレノイドの2種類が存在します。どちらも基本特性は同じですが、以下のような違いがあります。

DCソレノイドとACソレノイドの比較

駆動方式

直動式

直動式電磁弁の仕組み

弁体とプランジャが直結されている基本的な構造です。
流体圧力や口径が大きい場合、ソレノイドに大きな吸引力が必要になります。

パイロット式

パイロット式電磁弁の仕組み

流体圧力や口径が大きく直動式ではソレノイドの吸引力が足りない場合、パイロット式を採用します。

「パイロット」という言葉は水先案内人や操縦者という意味ですが、そのイメージの通り、主弁(メインバルブ)の開閉を操るための弁をパイロット弁と言います。パイロット弁で制御された流体の圧力を使って主弁を開閉する形式です。

流体の圧力を使うため弁体の開閉力は大きくなりますが、動作時間(応答性)が遅くなります。

なお、操作用の流体を図のように内部から供給するタイプを内部パイロット式、外部の別系統から供給するタイプを外部パイロット式といいます。

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方向数(ポート数、接続口数)

電磁弁から伸びる配管方向の数(ポート数、接続口数)により以下の3種類に分けられます。

2方向(2ポート)

2ポート電磁弁の仕組み

入口と出口の2ポートのみを持つ基本的な電磁弁です。「流す」or「止める」を制御します。

3方向(3ポート)

3ポート電磁弁の仕組み

供給ポート、シリンダポート、排出ポートの3ポートを持ちます。単動シリンダの動作方向制御や、流体の流路方向の切替に使用されます。

4方向(4or5ポート)

5ポート電磁弁の仕組み

供給ポート、シリンダポート(2つ)、排出ポート(1つ or 2つ)の計4or 5ポートを持ち、複動シリンダ等のアクチュエータの制御に使用されます。

上の図は5ポートの電磁弁を示しています。排出ポートのどちからは常に閉じている状態になります。

位置数(ポジション数)

弁体やスプールが取れる位置の数(ポジション数)によって以下に大別されます。

2位置

2位置電磁弁の仕組み

弁体の位置が2ポジションある基本的な電磁弁です。弁体(スプール)の位置により「流す」or「止める」あるいは「A行き」or「B行き」を切替えます。

記号で書くと、上の図のように四角い部屋が2つあります。ソレノイド操作により部屋を切替えて使用するイメージです。

3位置

3位置電磁弁の仕組み

弁体の位置を3ポジション作れる電磁弁です。ダブルソレノイドの場合に可能で、ソレノイドAに通電、Bに通電、どちらも非通電、の3パターンによりポジションを切替えます。

記号で書くと、上の図のように四角い部屋が3つになります。ソレノイド操作により部屋を切替えて使用するイメージです。

非通電時の開閉

非通電時(通常状態)に弁体を開けておくのか、閉じておくのかによって以下の2種類に分けられます。

ノルマルオープン (NO,常時開)

ノルマルオープンとは

「ノルマル」とは「普通の」という単語です。従ってノルマルオープン(Normal Open)は普通の状態で開、という意味になります。頭文字を取ってNOと表記する事もあります。

非通電時はバネの力で常時「開」の方向に弁体を固定するタイプです。開時間の方が長い場合や、バルブ故障時には開にしたい時に採用します。

ノルマルクローズ(NC,常時閉)

ノルマルクローズとは

非通電時はバネの力で常時「閉」の方向に弁体を固定するタイプです。閉時間の方が長い場合や、バルブ故障時には閉にしたい時に採用します。

電磁弁の使い方にもよりますがノルマルクローズを採用する場合がほとんどだと思います。

中立位置での状態(3位置5ポートの場合)

3位置の電磁弁はソレノイド非通電時にスプールの中立位置を作る事ができます。特に3位置5ポート電磁弁の場合は中立位置での回路が以下の3種類あり、目的に応じて使い分けます。

クローズドセンタ

クローズドセンタとは

スプールが中立位置のとき、全ての供給・排出ポートを閉にします。

電磁弁の先に閉じ込められた流体により圧力保持されるため、シリンダを中間停止させることができます。ただしリークがある場合は保持できなくなります。

エキゾーストセンタ

エキゾーストセンタとは

スプールが中立位置のとき、供給のみを止めて両側から排出します。

シリンダの圧力を開放する事ができるので、保持力は無くなり、外力で動かす事も可能になります。圧力開放により安全対策を図れる他、パイロットチェック弁と組み合わせてクローズドセンタの電磁弁よりも保持力の高い中間停止を作り出す事もできます。

なお注意点として、再起動した際にシリンダの飛び出し現象が発生します。両側の圧力が抜けた状態から、片側に圧力を供給すると、反対側から押し返す力が無い事により、シリンダが一気に動く現象です。

プレッシャーセンタ

プレッシャーセンタとは

スプールが中立位置のとき、排出を止めて両側に供給します。

シリンダの押し側、引き側の力をバランスさせたい時などに採用します。ただし、片側ロッドのシリンダの場合は、ロッド断面積分だけ左右で圧力の受圧面積が異なるため、ロッドが出る方向に動きます。

なお左右で圧力が均衡するため、中間停止状態でも外力によってシリンダーを動かす事ができます。

  

クローズドセンタ・エキゾーストセンタ・プレッシャーセンタの特徴をまとめます。

クローズドセンタ、エキゾーストセンタ、プレッシャーセンタの特徴を比較
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まとめ

電磁弁を選定するための基礎知識として、電磁弁の種類・特徴を解説しました。
種類が非常に多いので、一つ一つの知識は浅くとも、幅広く知識を持つ事が重要です。

電磁弁の選定項目としては以下があります。

  • 弁体構造(ポペット式、スプール式、スライド式)
  • ソレノイド数(シングルソレノイド、ダブルソレノイド)
  • 操作電源(DCソレノイド、ACソレノイド)
  • 駆動方式(直動式、パイロット式)
  • 方向数(2方向、3方向、4方向)
  • 位置数(2位置、3位置)
  • 非通電時の開閉(ノルマルオープン、ノルマルクローズ)
  • 中立位置での状態(クローズドセンタ、エキゾーストセンタ、プレッシャーセンタ)

皆様の参考になれば幸いです。

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